実務プロコース第 7回目:実施図面の方法
第07回目:実施図面の方法
さて、第7回目:前田紀貞建築塾 実務プロコースは「実施図面の方法」についてです。
実務プロコースは、既に実務をしている人たちを相手にしていますので、当然、「実施図面」というものが重要になってきます。
今回は、前田紀貞アトリエの大番頭:白石隆治が講師を務めます。
白石がアトリエに来てから10年が経ちますが、その間、アトリエの代表作を次々と世に送り出しています。
例えば、
CELLULOID JAM
TORUS
ORANGE
ああ、いずれも「実施図面」の描き甲斐のありそうなものばかりですね (^_^;)。
それに加えて、これらは「現場監理」もとても大変そうです。こちらの話も、後日、されることになっているようで、とても楽しみです。
しかし、今回はひとまず「実施図面」ということで話が成されました。
まず白石隆治講師は
実施図面とは建築作品実現のための「手段」に過ぎない
というところから話を始めました。
そこで、今回はそれについてのお話でした。
それは、前田所長が
(建築では)「図面を描くな」
ということを実施図面で具現化する為のことらしいです。
つまり、図面を描いていると、描くことそれじたいが目的化してしまうことがありますが、決してそうしてはいけない、ということでした。
それはどういうことなのか……
まず、建築が誕生してくるには、3つの段階があります。それは、
「PLAN → DO → SEE」
言い換えると
「計画 → 実行 → 検証」
つまり、
・最初に空間概念・デザインとしての「計画」が確固としてあり
・次にそれを的確に「実行」する為の手法があり
・そして、最後にそれが本当に実行されているかの「検証」をする
ということなのでしょう。
これを具体的な建築の図面行為にしてみると、
「基本計画 → 実施図面 → 施工図面」
となります。
順番にもう少し言えば、
****************************************************************
「PLAN」とは、
=コンセプト(建築の根本思想)
↓
=クライアントへの説得(プレゼンテーション)
↓
=基本計画(構造、素材、ディテール)
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「DO」とは、
=実施図面(詳細計画)・・・コンセプトを建築化
↓
=検討
※スケッチ、CG、模型(原寸1/15~1/30)
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「SEE」とは、
=施工図のチェック及び承認・・・工事、制作のための最終図
・実施図面の「再検証」
・コンセプトが本当に建築化されているか?
↓
=完成物の微調整 ・ 次工程の調整
↓
=建築作品の実現
****************************************************************
となります。
さて、ここでひとつ例を取って話が成されました。
ここに最初のスケッチがあります。
これが
最初の「PLAN」です。
これはまだ走り書きのようなものなので、「空間イメージ」というしかありません。
でも、建築はいつも、こうした「建築家の頭の中」からスタートします。
この「頭の中」が「PLAN」ということになるのです。
因みに、このスケッチが示しているのは
「内の内は外」
という「生命体細胞の内/外の関係性」を建築に翻訳することです。
上の3つのダイアグラムでいえば、
・一番左:都市に対しての「内部」を作る(ピンク色)
・真ん中:その中に更に「内部」を設定する(薄いピンク色)
・一番右:それを「外部」にする(緑色)
という手順です。
つまり、
外構壁(外)で囲われた建築(内)の「内内部」に「THE=外部」をつくる
こと、これが最初の「PLAN」だった訳です。
当然の話ですが、まずはこの「PLAN」が無いと出発のしようがありません。
所謂、コンセプトというものですね。
それは、建築家の情念のようなものからやってきます。
因みに、これを模型にしたのが上です。
左:まず都市から外部を切り取る
中:そこに内部としてのボックスを挿入する
右:その閉鎖されたボックスを「ザ=外部」にする
という手順です。
さて突然ですが、
下の公園みたいな光に満ちた空間は何でしょうか?
そうです、これこそが「内の内」という「ザ=外部」なのです。
今回の話は、この「ザ=外部」を作る為の
その為の「実施図面」の描き方、といことになります。
それには、この「公園」みたいな空間を実現するには
まずは開口部に
それを支えるディテール
が必要です。
これが二番目の「DO」です。
つまり、
ディテールとコンセプト(空間の質)はいつも絶対に切り離してはならない
ことになります。
以下がそれを実現する為のトップライトのディテールです。
基本は、
「トップライトが無いように見えること」
です。
ディテールでは、
「美しい洗練されたデザインのディテールより」より「それが無いように見せるディテール」の方が遙かに難しいとのことでした。
下から見上げた時の角度の検証、
各部材の見付/見込の検証、
防水性能の確保、
無駄に部材を使用しないこと、
等々、沢山の方向からの最適解を得ようとします
無論、壁内部との取り合いも欠かすことはできません。
トップライトですから、そこに結露しないような工夫も重要です。
こうしてできたのが、この写真のようなものです。
確かに、あれだけ複雑に見える「実施図面」ではありますが、
その汗と労力が全く見えないところが凄いです……
私も早く、このような図面を描けるようにならねば…… (-_-;)
そして、三番目の「SEE」です。
こちらは、現場での制作図による原寸検討です。
今迄、1/5〜1/10スケールで描いていたものを、本当に実寸で可能かどうか、
これを現場に入った段階で検証します。
上は、その時のサッシュ屋さんと描いた図面です。
この段階では、当然、最終的な施工の可能性、瑕疵が発生しないような検討も成されます。
以上が、
「内の内は外」
を実現する為の、トップライトの納まりを進めてゆく為の
「PLAN → DO → SEE」
でした。
他にも、幾つもの例が挙げられましたが、いずれもこの
「最初のコンセプトを如何に忠実に実現するか」
という点では、全く同じ思想のもと、各図面が制作されていました。
そして、白石講師が最後に言ったことです。
「PLAN DO SEE」を実現するために必要なこと」
それは、
「最後まで忘れないことだ」
何を?
そうです、
「建築の根本思想を」
こうしたことは、白石隆治講師の10年に渡るアトリエでの鍛錬から来ているものなんだなあと、
横で聞いていた私は全身にビンビン感じた次第です。
お疲れ様でした。
(前田紀貞建築塾塾生団体 AA)
前田紀貞アトリエ:http://maeda-atelier.com/